ARION製 STEREO PHASER (SPH-1) 自作の記録1

ARION製のフェイザー、SPH-1を自作した。
正確に言うとARIONのSPH-1を基にしたフェイズシフターを自作したので、製作記録を書いていく。

とてもニッチで本当に一部の人しか興味のない内容です。

 

まえがき

凛として時雨好きのギタリストなら大抵持っているこのペダル。自分も1台所有している。
こいつを初めて手にしたのはもうおよそ10年ほど前で、ありがたいことにサークルの先輩からタダも同然に譲ってもらった。
学生時代のバント活動ではSCHECTER製TKモデルのギター(廉価版)とBOSSのギガディレイとこいつを使っていた。
恥ずかしいことに、ろくに楽曲のコピーを行えなかった人間なので時雨のコピーなんて全然やったことはないが、音が好きだったので以来ずっとエフェクターボードに入っていた。

国内の格安メーカーのペダル(しかも製作が難しいモジュレーション系)をわざわざ作ったのは、生産終了品になってしまったという情報を目にしたからである。
(正確には分からない。ARIONのHPのラインナップにはまだ載っている)
EFFECTS LINE UP | Arionアリオン|上野開発センター

新品で売られているのは全然見ないし(他のARION 製ペダルも同様)結構値上がりしている状況。あのサウンドハウスでもARION製ペダルが全然売られていない。中古品を見つけてもう1台買うのもいいかもしれないけど、値上がりしているし、まだ手に入れていない人や必要としている人の手に渡らないのは少し気分が悪い。

自分が所有している1台はまだ問題なく使えるものの、スイッチの感度が少し悪くなってきている。
時々何回かカシャカシャ踏まないとON/OFFの切り替えができない状態である。
もともと直列で繋がずにスイッチャーのループに入れて使用していたのであまり関係はないけど、これ以上調子が悪くなったり壊れてしまうのは嫌だし悲しい。壊れたとしても修理は可能かもしれないけど、このペダルにおいては元々の状態から中身が変わってしまうのは嫌なのでボードから外すことにした。
代替としてLINE6のM9にモデリングされているフェイザーをしばらく使ってみたけれどしっくりこなかった。

ということで代替品を己で作ることにした。

とはいっても自作品なので製品と異なる部分も多い。
というか製品に使用されているFETとICが生産終了品なので代替品を使うしかなかった。
(ARION製ペダルが生産終了になっていたとしたらこれが理由なのでは)

よって、まったく同じものなんてできるわけないので、ここは開き直って自分の使いやすいように仕様を変えた。

製品との違いは以下の通り。
 ・トゥルーバイパス仕様
 ・電池駆動なし。アダプタ駆動のみ
 ・電源アダプタ使用時の電圧降下を改善
 ・ステレオ機能の廃止(アウトプットを1個だけに変更)
 ・RATE(スピード)に合わせてインジケータのLEDが点滅
 ・ネットで見つけたモディファイを盛り込む(一部のパーツの定数変更等)
 ・FETとICを今でも手に入る汎用性のもので代用

インターネットは便利なものなので比較的容易に欲しい情報は見つけやすい。
SNSなんかでも機材好きの情報発信があるのでSPH-1のモディファイを行っている人はちらほら見つかった。
しかし、このペダルの自作につながる情報がほとんど見つからない。一応、回路図とレイアウトは見つかったけれど1件ずつしか見つけられなかった。モディファイや堅牢な別筐体への移植をしている人はちらほら見つかるものの自作してる人はほぼ見ない。自作をほのめかしている人の書き込みをたどってみても完成の情報がない。
めちゃハードル高いじゃんと思ったけど、時間と金をドブに捨てる覚悟と嫌になり趣味をひとつ無くす覚悟をちょっとだけ持ってやってみることにした。

 

①部品の調達

部品は以下の表のとおり

・抵抗

モジュレーション系や空間系を作るときは金属皮膜抵抗を使うのが定番みたいだけど、製品はカーボン被膜抵抗だったので一部を除いて自分もカーボン被膜にした。
(一部に金属皮膜抵抗を使用したのは特にこだわりがあったわけではなく余りものを使っただけ)

コンデンサ

フィルムコンデンサに関しては秋月電子で売ってる1個15円とかの黄色いボックス型のやつなら間違いないと思う。0.0082µF(822)のコンデンサはボックス型のものが見つからなかったのでルビコンの安い銀色のフィルムコンデンサを使った。
セラミックコンデンサに関しては安い円板状のやつで十分。
電解コンデンサに関しては0.1µFのうちの1個、0.22µF、1µF、47µFのうちの1個にニチコンMUSE(緑色の両極性コンデンサ)を、その他にはニチコンのFine Goldを用意しておけば間違いないと思う。47µFはサイズがデカいので、自分は代わりにニチコンのKT(水色のやつ)や東信工業のUTSJ(銀色のやつ)を使用した。
後でも言及するけど、0.1µFのうちの1個(ニチコンMUSE)に関してはフィルムコンデンサにしてもいい。あと、 0.22µFに関してはなかなか見つからないかもしれないので1µFで代用してもいいと思う。

・IC(オペアンプ)

ICは全部で5個必要で、製品ではうち1個にJRC2904D、その他4個にA6458Sが使われている。
JRC2904Dは秋葉原千石電商で入手できた。A6458Sは入手できなかったので汎用のデュアルオペアンプで代用した。これに関しては4558とかTL072が代替品として使える。自分は4580DDを使った。製品には9ピンで足が1列に並んでるやつが使われているけれど8ピンのデュアルオペアンプで問題ない。
(LA6458Sがよく見る8ピンのデュアルオペアンプの形をしてるっぽい)

・FET

製品ではFETに2SK772が使用されているが生産終了品で入手しにくかったため2SK30A-GRで代用した。2SK30A-GRも生産終了品だけどまだ手に入れやすい。
しっかりとしたエフェクトを得るためにはFET4個全ての特性をできるだけ揃えないといけないので、自分は秋葉原千石電商で10個入りのパックを2つ買った。
パックで買えば同一ロット品が揃うような気がしなくもないので多分バラで買うより良いと思う。

②FETの選別

エフェクトのかかりを深くするためにはこの作業が必要。
今回は特性の近いFET4個をピックアップする必要がある。
秋葉原千石電商で買った20個と手持ちの3個を加えた計23個の全てに対しテスターでIdssを測定した。その後、表計算ソフトで数値順にソートし、1~23にナンバリング。
上から4個ずつ(1~4、2~5、3~6、、、20~23)順々に抜き出して各グループの誤差を出した。
誤差の算出はグループ内の最小値と最大値に対して行えば良いのでそんなに時間はかからない。
例えば1~4のグループなら1と4、5~8のグループなら5と8の値に対して算出し、誤差が一番小さいものを選べば良い。
自作本とかネットの情報だと誤差3%以下だとしっかり深くエフェクトがかかるとのこと。
自分の場合は1%以下になるグループが2つほどできた。
Idssがきちんと測定できていたのかは不明だけど、一応自分の作った個体はちゃんと深くエフェクトがかかった。
Idssの測定は
 ・テスターの測定レンジを10~20mAに設定
 ・FETのソースとゲートをショートさせ9V電源のマイナスに接続
 ・9V電源のプラスをテスターのプラスに接続
 ・FETのドレインをテスターのマイナスに接続
 ・テスターに表示された値が安定したら記録
の順に行えばよい。

小さなブレットボードがあると楽に測定できる。

小さなブレットボードがあると楽に測定できる

測定記録はこんな感じ

 

今回はここまで。
とりあえずフェイザーの自作は色んなコストがかかる。